私の知る得難い良書を書く人々
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このリストは私が読んだ数学,科学,計算機関連の本の中でのおすすめです.
凡例
- 著者
- 私のおすすめの本とその簡単な説明
- Don Cohen, 新井 紀子
- アメリカ流 7 歳からの行列 (Changing Shapes with Matrices)
面白ろい.
特にアメリカ流という意味はわかりませんが(Don Cohen流のこと?),
私の場合,このタイトルのせいで読むのが後回しになってしまいました.
私には原題の方が面白そうです.
(ところで「電話番号をかける」という日本語は難しいです.)
- 木村 良夫
- たとえば大学一年生のためのおもしろ線型数学(現代数学社)。
固有値の意味を御存知ですか? 行列って何を意味するか御存知ですか? こ
の本にはそれがあります。しかし、ここに書いてあることだけではまだ十分
ではありません。次の本を求む。
- トランスナショナル カレッジ オブ レックス: ヒッポファミリークラ
ブ
- フーリエの冒険。私はなぜフーリエ変換の第一項が a0/2 なのかこの
本でわかりました。正規直交などのイメージをつかんだのもこの本からです。
- マーチン・ガードナー
- Aha、自然界における右と左。あのファイマンが大喜びして踊り出し
たという本。このような人がいる国はいったいどれくらいあるのか疑問であ
る。このような人一人によっていったいどの位の人々が利益を受けているの
か私にはまったく想像がつかない。(ところで、最近知ったのだが、Aha の
訳者の一人に竹内郁雄先生がいらっしゃった。知らないうちに私は竹内先生
の影響を大きく受けているようだ。先日ようやくプロシンでお会いすること
ができ、サインも頂いた。感激である。)
- 林 晋
- ゲーデルの謎を解く(岩波科学ライブラリー)。東北大学においては西
関先生の授業、この本あるいは皇帝の新しい心のいずれかによって不
完全性定理のイメージをつかむ人がかなりの数にのぼっているに違い
ない。
- 小針 日見宏 (日見 で1文字です)
- 確率、統計論(岩波)。高校からの数学入門 数学 I, II, III ... ∞
(日本評論社)。この先生の本ほど数学をわかることのできる教科書は
滅多にないにもかかわらず、入手が困難である。数学の7つの迷信は未
だに入手できない。
- 志賀 浩二
- 30 講シリーズ (朝倉書店) はすばらしい.数学が生まれる物語(岩波
書店)はさらに平易で読み易い.自然数のペアノの公理が中学生や高校生に
もわかるように説明されている.高校生に送る数学シリーズもすばらしい.
たとえば,多様体というものがあるが,少なくともこれが「何か」という
ことはわかるだろう.その世界は広く険しく,ただ「何か」ということし
かわからないかもしれない.しかし,最初のstarting pointに立たせてく
れる本は少ないと思う.
- 長沼 伸一郎
- 物理数学の直感的理解(通商産業研究社)。一部まだ理解できない部分
があるが、イメージがある。
- 野崎 昭弘
- たのしい数学シリーズ 数学的センス、不完全性定理 (日本評論社) 詭
弁論理学、逆説論理学 (中公新書),赤いぼうし(童話社)など。
何年か前にある大臣が「過去の日本人の虐殺なんて
ものは本当がどうかわからない、それに比べて原爆を落としたことの
方が非道いでないか。だから虐殺について述べるのはフェアでない」
という愚かな発言をした。さて、内容もさることながら、この論理は
泥棒の詭弁と言われて、論理的ですらない。理由になっていないので
ある。盗みに入って何も盗まずに捕まった泥棒が次のように言ったこ
とと同じである。
「他にも泥棒はいるんだ。どうして俺だけつかまえるんだ? 他にも捕
まえなきゃいかんやつがいるだろうが。(俺だけ捕えるのはフェアでな
いから見逃せ)」盗人猛々しいとはこのことである。世界には法的、倫
理的には非常に困難な命題があるが、せめて数学的、論理的に無意味
だと言えるような発言程度は控えて頂きたいものである。恥ずかしす
ぎる。
- ポール・ホフマン
- 数学の悦楽と罠(白揚社)。この本には、はまった。これを読むと整数
論などをやりたくなって、一生を左右しかねない。進路を決めてない人
は注意。
放浪の天才数学者エルデシュ(草思社): これも面白い.ただいくつか訳
に関することで気になる部分はあった.たとえば,91 ページの
Chebyshev の定理は,at least が抜けているような気がする.「ある数
とその二倍数のあいだにはかならず素数がひとつ存在するというチェビ
シェフの定理」という部分だが,たとえば,50 と 100(98) の間には二
つ以上ある.これは,【/少なくとも】かならず素数がひとつ【/は】存
在するというチェビシェフの定理(If n > 1, then there is always at
least one prime p such that n < p < 2n.)のことであろう.しかし,
とにかく面白い本でおすすめ.
- ダレル・ハフ
- 統計でウソをつく法、確率の世界(ブルーバックス) 一読の価値あり。
詐欺の手法を知ることは詐欺から身を守ることにもなる。
- ダグラス・R・ホフスタッター
- ゲーデル,エッシャー,バッハ(白揚社).亀とアキレスの対話,エッ
シャーの素晴しい絵,そしてバッハとキャロル,,,,,このような
本を人間が書くことができるのは驚きだ.
- 遠山 啓
- 新数学勉強法(講談社ブルーバックス) の線形代数の部分の行列式の意
味の部分は印象に残っている.数学入門(上下).
- あさり よしとお
- まんがサイエンス。この本を全国の子供が読んでいるのならば科学離
れに心配などないんではないだろうか。
- R.P. Feynmann, Ralph Leighton, Christopher Sykes
- 御冗談でしょうファイマンさん。物理法則はいかにして発見されたか
等。そして、ファイマン物理学。ファイマンさんの本は教科書も面白
い。声が聞きたいのであれば Six easy pieces, ファイマンさん力学
を語るが入手可能である。他にもあるのならばぜひ教えて欲しい。
- 'The whole universe is in a glass of wine..'
- 科学
- J. Gleick
- Genus, Chaos
- Brian Green
- The elegant universe.
- 科学者をめざす君たちへ -- 科学者の責任ある行動とは --
- 米国科学アカデミー編 化学同人
- 池田 光男・芦澤 昌子
- どうして色は見えるのか 平凡社 自然叢書 ISBN 4-582-54617-X C0042
- 都築 卓司
- 不完全性定理、四次元の世界、タイムマシンの話、10 歳からの○○な
ど。
- Steven M. Casey
- Set phasers on stun: and other true tales of design,
technology, and human error
- Donald A. Norman
- 誰のためのデザイン? (新曜社 ISBN4-7885-0362-X)
- William Poundstone
- The recursive universe. Computer scientists always thinks 'what
is computation?'. You can catch a glimpse about the question
from this book.
- カール・J・シンダーマン
- サイエンティストゲーム (学会出版センター) : もし科学者になると
したら読んでおくのも良いかもしれない.
- S. ケイシー
- 事故はこうして始まった! ヒューマンエラーの恐怖,化学同人
ISBN4-7598-0279-7 C0040
- W.ハイゼンベルグ
- 「部分と全体」ISBN4-622-01673-7 みすず書房 : これはすばらしい本
なのだが,日本語の本には重大な欠陥がある.
それは表紙のデザインでタイトルを間違えている所である.
これは残念でならない.ドイツ語の名詞は大文字で初まる
のだ.私のドイツでの友人の多くはこの本のドイツ語のタイトルを見
るとしばらく混乱しているようで,しばらくすると,ああ,あれか.
という感じになる.
大文字小文字の程度で,と最初は思ったが,日本語のタイトルでも
「ごじら」とか,「らん」とかが映画のタイトルと言われてもちょっ
と混乱するのではないだろうか.「ゴジラ」「乱」と書かれればより
理解しやすい.
(計算機そのものを知るための)読み物
- Alan W. Bierman
- やさしいコンピュータ科学 (訳監修:和田英一) アスキー ISBN:
4-7561-0158-5
フリップフロップをリレーで作成する方法や,
並列処理がどんなものかを知ることができる.
これから計算機の仕組みについて学ぼうという人に
入門書としておすすめです.
この次に Computer Organization and Design
でハードウェアを知るというのが良いと思う.扉の漫画も良い.「ボス,
ソフトウェアの予定が遅れています」「プログラマの人数を倍にしろ!」
「ボス,ますます進行が遅れました.」「さらに倍だ!」
「ボス,計画はふりだしに戻りました.」「さらに...」
- Tom DeMarco and Timothey Lister
- Peopleware: The key of success is a human for a project.
プロジェクトの管理は結局人のやる気を持続させることである.わかっ
ていたと思っていたが,私自身間違いをいくつもいていたことに気が
つかされた本である.もっと早くに読んでおけばよかった本だ.
2007-3-6(Tue)
- 星野 務
- 誰がどうやって計算機を作ったのか
- Donald E. Knuth
- Literate Programming, etc.
計算機にかかわる者に彼についての説明は不要であろう。
まるでトレッキーにスポックの説明が不要であるように。
- William Poundstone
- ライフゲイムの宇宙.計算ということはなんだろうということを
どうして計算機屋は良く考えるのだろう.
その理由の片鱗がこの本で垣間見えると思った.
- Gerald M. Weinberg, Donald C. Gause
- ライトついてますか? コンサルティングの秘密など。
ワインバーグさんの本で面白ろくなかった本はなかなかない。
入力の話だけはちょっと古い気もするが、
それでも色褪せているわけではない。
特に木村泉先生の訳された本はすばらしい。
- Philip J. Koopman, Jr
-
Stack Computers: the new wave
Stack Computer は古いと言うなかれ,組み込みや Java
の分野ではそのコードサイズの小ささなどでまだまだ利用されている.
Forth や PostScript などの言語はスタックマシンを
そのままベースにしている.
特に私は StackCache の特性は見直されて良いと思う.
現在のレジスタマシンにとってかわるとはあまり私も想像はできないが,
しかし,興味あるアーキテクチャの一つであることは確かである.
邦訳 田中清臣, 藤井敬雄「スタックコンピュータ」共立出版,
ISBN4-320-02694-2
計算機アーキテクチャ
- W. Daniel Hillis
- コネクションマシン。私が並列計算機を研究するきっかけとなった本。
彼らの考えは本当にすばらしい。しかし、まだ構造と階層とそして問
題と計算機に対する考察が不足している。そこを改善することによっ
てきっと超並列計算機は良い道具となると思う。
- John L. Hennessy/David A. Patterson
- Computer Architecture : A Quantitative Approach. 大学の 4 年生
になって中村研究室に配属になった時、最初に読んだ本である。当時
は原著が出版されたばかりであった。以降しばらく中村研究室では新
入生はこの本の 1, 2, 3, 5, 6, 7 章をまず読むことになっていた。
(今はどうなのだろうか。)
- David A. Patterson/John L. Hennessy
- Computer Organization and Design. まだ私は 2nd Edition を読ん
でいないが 1st Ed. はすばらしかった。
- Mike Johnson
- Superscalaer Microprocessor Design. Patterson と Hennessy の本
を読んだのであれば,これは次に読む本としておすすめである.
これはすばらしい博士論文である.また,
確か彼はAMDの主な研究者でもある.
実際に AMD ではこの考えが使われているだろうという部分でも興味が深い.
言語
- Abelson, Sussman, and Sussman
- Structure and
Interpretation of Computer Programs この本でプログラムを始
めて学ぶという方は幸せである.
- ``Design Patterns'', Erich Gamma, Richard Helm, Ralph Johnson,
John Vlissides, Addison Wesley (私が読んだ邦訳はソフトバンクの
もの)
- この本を読むたびに自分のプログラムのスタイルが少しづつ影響され
ていくのがわかる.通して読んで,のちに辞書のように読むものだろう.
- ``How to write Parallel Programs (A First Cource), Nicholas
Carriero and David Gelernter, M.I.T. Press (並列プログラムの作
り方 村岡洋一訳 共立出版)
- 様々な示唆に富み,たいへん面白い.Linda の本である.
残念なことに多少訳に難がある部分があり,原書を注文してしまった.
とはいえ原著を注文させる気になるほどのすばらしさである.
- 日高 徹
- Z80 マシン語秘伝の書 (Z80 を愛する人へ)
- Brian W. Kerninghan, P.J. Plauger
- プログラミング書法,ソフトウェア作法.すばらしい.
Fortran の特性に特化したような部分もあるのでちょっと古いかもし
れないが,かなりの部分は言語とは独立しているため今でも
なお参考になる.
実際,私は日本語のプログラムの書き方の本の中で,
この本を一部だけ最近の言語用にアレンジして使っているような本を
いくつかみかけた.
- Scott Meyers
- Effective C++
C++ は難しい.しかし,ある作法を守ればより簡単になる.自由
度が大きい言語は逆に難しいというのは perl などでそう思う.また,
適度に restrict された言語,Java などの方が逆説的であるが,
私には易しい.
- Martin Fowler
- Refactoring
テスト中心のプログラミングによってコードの変更中にも常に動く
コードを保持する方法.そして,コード改善の重要性,もちろん重要
性はわかるが,その手順をカタログにするということによって机上の
空論ではなくなっているところがすばらしい.
システム関連
- ``Distributed Operating System'', Andrew S. Tanenbaum,プレンティ
スホール,(水野,鈴木,宮西,佐藤ら訳), ISBN 4-931356-21-4, 6400円
- 分散システムについて知りたければまずこれを読むのが良いだろう.
IKNOWTHISISASTUPIDTHINGTODOBUTNEVERTHELESSGOTO LABEL;
ところで,図 4-29 (原文では 4-32) にはちょっと納得できない部分があ
る.単純なミスだと思うが..
- ``デバッガの理論と実装 (How Debuggers Work)'', Jonathan
B. Rosenberg 著 吉川 邦夫 訳,アスキー出版局, ISBN4-7561-1745-7
C3055, 3500 円
- デバッガは重要な技術であるがなかなかまとめた平易な本というもの
をみたことがない.この本はデバッガの中身というものを知りたい場合の入
門として良いと思う.
Computer Graphics に関してはいろいろありますが,
ちょっと多すぎて整理できません.面白い論文も多数あります.
ちょっと専門になってしまいますが,
このあたりからどうでしょうか.
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